大川興業第28回本公演 Show The BLACK
(作・演出:大川豊   出演:未公表)
09/30(火)19:00〜/ザ・スズナリ


※「自腹で観てるのだから自由に評価する権利がある」という自己中心的精神に基づいた完全な個人的感想であり、大変に偏った見解となっております。
※ご自身とは異なる意見を知ることで気分を害される可能性のある方は、読まずにお引き取りいただきたく存じます。
※また、お読みになった後でのご批判はお受けいたしかねますのでご了承ください。



今年になって下北沢にはよく来ていたはずだったけど(そうでもないか・・・?そうでもないな・・・)
スズナリは、はじめて。
場所としても劇場群からちょっと離れたところにあるんですね。
曲がり角に出くわすたび、通りがかりの人に訊きまくった。
直線にしか進めないゲーム。
点と点を直線でつないでください。

最後に訊いたおじさんは、説明に手指など使わず
あごで「どこって、ここだよ」
あ、着いた。



開場時間も近づき、わらわらと劇場周辺に集まる人々。
そこへ外整理のスタッフの女性が。
女性、ってか、おばちゃん。
50代前半ぐらいの。
なんかボーイスカウトみたいな格好のおばちゃん。
でも気のいいおばちゃん。
さすが大川興業(違)。

ともかく、このスタッフの方がかなり徹底して「良い子のための観劇ルール十ヶ条」というようなものを大きな声で何度も叫んでいました。
「携帯電話は〜っ、根っこから〜っ、オ〜フっ!」
手を×(バツ)にするなどして、いちいち大きいアクションがついてる(笑)。
なんだかこんなふうに、見てる方が恥ずかしくなるようなアナウンスだと、かえって効果が大きいみたいです。
その場にいた人々は、みんな苦笑いしながらも携帯電話を切っているのが目に入りました。


そして開場。
初スズナリの私にとって、今回の会場内までの道のりはかなり不思議体験でした・・・。
と思ったら、後日別件でスズナリを訪れたところ、次に記する会場までの道のりはこの公演のために特設したものらしい、とわかりました。

階段をのぼってロビーでチケットを切ってもらい、そこでなぜかペンライト(←先がガムテープでぐるぐる巻いてある)を手渡される。
細い廊下を通りトイレの前も控え室と思われる部屋の前も過ぎて、廊下つきあたりのドアからいったん外廊下に出、
橋のようなところを夜風の吹くなか渡ると出入り口を隠す暗幕(ここは舞台裏の出入り口だったらしい)。
そして暗幕の前に立ったスタッフが、ひとりひとり、会場の具合を覗きながら「次の方お入りください」といって幕を上げ下げ。
幕の中に入ってみると、仮設の客席段、しかも段が急。
あちこちに板やらパイプやらが張りめぐらされていて、席にたどり着くまでの通り道も、やっと1人が通れるか、というぐらいの狭さ。
「お客様はお一人様ですか?」と訊かれ、うなずくと「それでは最前列に女性専用席がございますので」
えっ?
女性専用席?
しかも最前列に・・・?
大川興業の用意する最前列の女性専用席ってどういうこと・・・などと、多少は怯えながらもワクワクして急な段をパイプをつたって降りていく。

席上に置かれた折り込みチラシ、そしてパンフレットには、「お客様へのお願い」という紙が。

お客様へのお願い

  この公演はお客様のご協力があってはじめて成立します。以下の事項について、
  ご協力下さいますよう何卒よろしくお願いします。

  1. 演出の都合上、暗闇が約1時間30分続きます。暗所恐怖症の方、心臓の弱い方、妊婦の方は、あらかじめスタッフにお申し出下さい。
  2. 客席内は暗視カメラにより、スタッフには見えておりますが、念のため、貴重品などお手荷物は膝の上でお持ち下さい。
  3. 万一、上演中に気分が悪くなられて外に出られる場合は、お渡ししているペンライトを必ず足元に向けてつけ、出口へお進みください。その際、ペンライトを舞台には絶対に向けないで下さい。明るいうちに出口への通路をご確認下さい。また、自力で出口へ向かうことができない場合のみ、その場で手を挙げて下さい。
  4. ペンライトについているテープ等は絶対にはがさないで下さい
  5. 万一の場合以外は、ペンライトは絶対につけないで下さい
  6. 客席内でのご飲食はご遠慮下さい。
  7. 暗闇の中、耳が大変敏感になってきますので、小さな声でのお話もご遠慮下さい。
  8. 携帯電話等お持ちの方は、マナーモードにするだけではなく、必ず電源をお切りください。時計等のアラーム等、音の出るものをお持ちの方は、スイッチを必ずOFFにして下さい。
  9. 写真撮影、ビデオ撮影、携帯電話による撮影、録音等は固くお断り致します。発見した場合は没収させていただきますので、ご了承下さい。
  10. 出演者への面会、劇場付近での入、出待ちは演出上の都合につき、お断り致します。ご了承下さい。
この紙と同内容のアナウンスも、何度となく繰り返される会場内。
ロビーで渡されたペンライトはこのためだったか・・・と、万一を思い浮かべて
そつのないペンライトのつけ方を練習する私、と思ったら周りのみんなもカチカチと練習してた。
「約1時間30分」の暗闇、出演者未公表。
この徹底ぶりが、いやがうえにもボルテージを上げていく。






























大川興業より「来年再演の可能性あり」との情報が出ているため、
公演内容については一切掲載いたしません。





























う〜ん、というわけで感想も詳しくは書きません。
書けません。
さんざん1人で盛り上がっておいてごめんなさい。
ああ、ちょっと残念だけど。

鑑賞後、急いで家まで帰った私は
観てきた(感じてきた)闇の情景を、公演内容詳細を、というかほとんど記憶台本そのものを書き起こししていたのに。
3時間もかけて。


でもまぁ、再演があるのなら、それに直接足を運んでいただくのが一番うれしいです。
これは本当に1人でも多くの人に観て(感じて)もらいたい舞台。
こんな作品、ほぼ特許取得も同然で、大川興業以外は作れないし
(他の劇団が同じように闇舞台を作っても、それは単なる二番煎じだと私は認識する予定)
あの闇の中の不安は1度きりしか体験できないし
(おそらくこの公演自体でも2回目以降に観た際は初回の興奮が減るはずと私は予測)
本当に人生で1度しか体験できない作品です。
とにかく大川総裁を尊敬するばかり。


そしてこれを体験しているかしていないかで人生の経験ポイントは、そのグラフに大きな差をもたらすと思う。
ううん、グラフとか経験の価値とかそういうことはもはや問題にならなくて、・・・・・・。

人間がいかに視覚中心に生活しているかということを知らされる怖さと恥ずかしさ。
闇に溶けていく気持ちの良さ。

見えないことに不安を感じ、次第に慣れ、そしていつのまにかそれが快感に変わっていく、
かと思うと恐怖なんかはやはり背中合わせで、ここで笑っていてもここで涙を流しても油断はならないと視覚以外の、
聴覚嗅覚触覚、もしかしたら味覚にさえ神経を張りめぐらしているその状況。

人の息づかいが立体的に聞こえるということ。
人が動くと風が起きるんだということ。
人が近づくと匂いが変わるんだということ。
自分が呼吸をしているということ。

人間は視覚から情報を得られなくなると、ほかの感覚から集めた情報をもとに視覚の記憶を引き出して
今の自分にとってもっとも都合のいい情景を思い描き必死に不安を打ち消そうとしているらしく。
すべては気配を手がかりに。






ぜひ。








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written by やのひろこ

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